Excelで平均値を計算する際、多くの方がAVERAGE関数やAVERAGEIFS関数を使用されていることでしょう。
当ブログでも、これらの基本的な平均値計算について詳しく解説した記事を公開しています。
ただし、単純な平均値だけでは適切にデータの傾向を把握できないケースも少なくありません。
例えば、「販売数量が異なる商品の単価平均」や「家族構成に応じた月別食費の実態把握」など、各データの影響度(重み)を考慮する必要がある場面では、重み付き平均(加重平均)の活用も有効です。
もくじ
この記事では、Excelの基本操作に慣れている方を対象に、重み付き平均を計算する複数の方法を、具体的な事例とともにわかりやすく解説します。
さらに、なぜ重み付き平均がビジネスシーンにおいて重要なのかという背景についても触れ、より実践的な理解を得られる内容に仕上がるように意識しました。
重み付き平均をExcelで計算する基本的な方法と単純平均の違い
Excelで平均値を求める際、多くの方がAVERAGE関数やAVERAGEIFS関数を使って「単純平均」を計算されているでしょう。
しかし、単純平均だけでは実態を正しく把握できず、判断を誤ってしまうこともあります。
具体的な例で考えてみましょう。
以下のような販売実績があったとします。
- A列:商品名(商品A、商品B)
- B列:単価(100、500)
- C列:販売数量(100、5)
さらに、B5セルに計算結果を反映させます。

販売実績の例:
- 商品A:単価100円で100個販売
- 商品B:単価500円で5個販売
この2商品の平均単価を単純計算すると:
(100円 + 500円)÷ 2 = 300円

しかし、実際の売上構成を見ると、商品Aが全体の95%(100個÷105個)を占めています。
つまり、ほとんどのお客様が100円の商品を購入しているにも関わらず、平均単価は300円と算出されてしまいます。
この300円という数字では、「実際にお客様がいくらぐらいの商品を購入しているのか」という現場の実態を正しく表現できていません。
そこで、販売数量に応じた「重み」を考慮して計算すれば、より現実的な平均単価を求めることができます。
重み付き平均を計算できる代表的な方法として、SUMPRODUCT関数とSUM関数を組み合わせた式を使います:
=SUMPRODUCT(値の範囲, 重みの範囲) / SUM(重みの範囲)
この計算式の仕組みは以下の通りです:
- SUMPRODUCT(値, 重み):それぞれの値と重みを掛けて合計(分子)
- SUM(重み):重みの合計(分母)
つまり、「値 × 重みの合計」÷「重みの合計」で、重み付き平均の計算が可能です。
準備したデータを使って、実際にExcelで重み付き平均を計算してみます。

計算式(D2セル)の入力:
=SUMPRODUCT(B2:B3, C2:C3) / SUM(C2:C3)
この式を入力すると、結果は119.048…と表示されました。
計算過程をより理解しやすくするために、過程を分解したものが以下の表です。
計算するもの | 数式 | 結果 |
---|---|---|
分子の計算 | =SUMPRODUCT(B2:B3, C2:C3) | 12,500(100×100 + 500×5) |
分母の計算 | =SUM(C2:C3) | 105(100 + 5) |
最終結果 | =14500/105 | 119.048... |

また、重み付き平均の注意ポイントは以下のとおりです。
- 設定範囲:値の範囲と重みの範囲は必ず同じ行数にする
- 空白セルの扱い:計算範囲に空白セルが含まれないよう注意
- 絶対参照の活用:数式をコピーする場合は、必要に応じて絶対参照($マーク)を使用
実務を意識した重み付き平均の実例集
では、実務でも起こりそうな場面を想定した、重み付き平均の実例を紹介します。
基礎的なSUMPRODUCT関数以外の方法も含めています。
実例①:売上単価 × 販売数量で平均単価を出す
商品の価格は、それ自体が持つ機能や希少性、ニーズに左右されます。
また、複数の商品を取り扱う場合、販売数の多い商品ほど平均単価に与える影響は大きくなるのが普通です。
しかし、Excelで単純に平均を出すだけでは、その“重み”が反映されません。
ここでは、販売数量を「重み」として加味し、実際の売上構成に即した平均単価を出す方法を紹介します。
SUMPRODUCT関数を使った基礎的な方法が最適な方法です。
上の表の場合は、平均単価が150円、重み付き平均は133円、17円ほどの誤差が発生しています。

このように、「どれだけ売れたか」を無視して平均を出すと、判断を誤る可能性があります。
重み付き平均を取り入れることで、数字に現実感が宿り、より納得感のある判断ができるようになります。
実例②:家族の帰省と食費をもとに家計を分析する
重み付き平均は、ビジネスだけでなく家庭の家計管理にも応用できます。
たとえば、大学に通う子どもが夏休みや冬休みに帰省すると、その月の食費が一時的に増えるという経験は多くの家庭にあるのではないでしょうか。
こうした変動のある家計を正しく分析するには、単純平均ではなく「一人当りの平均食費」が有効です。

ここでは、重み付き平均の定番(SUMPRODUCT関数)では正確な結果を導き出せない、ということも大きなポイントです。
データの意味を考えて適切な式を組み立てる、というのがとても重要なプロセスですね。
実例③:テストの配点を加味した成績評価
テストの成績を平均する際、すべてのテストが同じ重要度であるとは限りません。
たとえば、小テストは10〜20点、中間や期末テストは100点、といったように配点に差があるのが一般的です。

このようなケースでは、単純平均では正確な評価ができません。
また、先ほどの家族の食費計算と同じように、SUMPRODUCT関数では正確な答えを導きだせません。
よくあるミスと注意点
重み付き平均は便利な一方で、ちょっとしたミスで誤った結果を出してしまうリスクもあります。
特にExcelでは、関数の構造がシンプルなだけに「正しい前提」が崩れると、気づきにくい間違いをしてしまうことも。
ここでは、よくあるミスとその対策を紹介します。
① 値と重みの範囲がずれている
行数や列数が一致していないと、#Value!エラーになってしまいます。
分子と分母の行数が正しいかを確認しましょう。
B2:B10 と C2:C10 のように一致させると、範囲が判別しやすいのでおすすめです。
② 重みの合計がゼロまたは空欄を含む
SUM(重み) が0、つまり分母が0になると、#DIV/0! エラーが返されます。
IFERROR関数を使ったエラー回避も、必要に応じて行いましょう。
③単純平均と混同している
表の中に「平均」というラベルが複数あり、どれが重み付きか見失ってしまいます。
場合によっては単純平均を「重み付き平均」と勘違いしかねません。
単純平均と重み付き平均を併用する場合は、判別しやすいよう列名の表記を分けましょう。
④表形式でないデータに無理に適用している
SUMPRODUCTの設定範囲内に合計行や空白列、見出しなどが含まれてしまうと、本来の計算結果とは違う答えになることもあります。
そのような問題を発生させない有効な手段は、テーブル機能の適用です。
テーブル形式でない表は、一括計算しづらい構成になりがちです。
テーブル形式にするだけでも、ノイズが含まれることによる計算間違いを激減できるでしょう。
まとめ
重み付き平均は、一見すると少し手間がかかるように思えるかもしれません。
しかし、すべてのデータを同じ重さで見ることの危うさを知っている人にとっては、むしろこれが標準です。
実務では、売上、アンケート、投資、評価など、重みが異なる要素が前提のデータにあふれています。
そんな中で、単純平均だけを使っていては、的外れな結論や、説得力に欠ける報告書になってしまうことも。
Excelの SUMPRODUCT / SUM を使うことで、重み付き平均を簡単に計算できます。
そしてこのスキルはデータの真意を理解している人として、周囲からの信頼や説得力にもつながるでしょう。
「同じ平均なのに、なぜか信用できない」
その差は、“重み”を意識しているかどうかかもしれません。
ぜひ今回紹介した重み付き平均を、日々のデータ分析に取り入れてみてください。
今まで気づかなかったことがきっと見えてくるはずです。